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特別養護老人ホーム/別れ①

 平成14年3月に入居されたKさん(94歳)が11月4日早朝に悠悠タウンで亡くなられた。

 入居されたのが8年前で私はその当時のKさんを知らない。
私の知っているKさんは、胃ろうで栄養を摂取され、手足の拘縮が進み寝たきりで全介護状態のKさん。
4月以降、私は時間が許す限り居室へ伺い「おはようございます。今日も1日よろしくお願いします」
と声をかけるようにしていた。

 限られた職員数で50名(3F)の入居者の日常生活のケアを行わざるを得ない介護現場の状況では、
寝たきりの方の職員の関わりがどうしても手薄になる。
少しでもそれを補うために、私のできることはこうして朝、Kさんへ声をかけることぐらいであった。
ベッドの脇に若い頃ご家族とともに撮った写真が、小さな写真立てに入れられ飾られていた。
とても素敵な写真だった。
当然のことではあるが「こうした頃もあったんだ」といつも思っていた。

 亡くなられる前日の朝、いつもと同じように声をかけさせてもらっていた。
 ご家族からは「ありがとうございました。お世話になりました」という言葉を頂戴した。
本当にその言葉に値するようなケアを私たちは届けることができていたのか…。
自分自身に立場を置き換え考えなければならない。

心よりご冥福をお祈りいたします。