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彼女は家にいたい。

彼女は大きなおうちで一人暮らし。
大きな庭には築山があり、植木はいつも整えられ、落ち葉一つ落ちていない。
それは毎日早朝から彼女が掃除をするから。
二重に折り曲げたその体で上手に箒と塵取りを使ってゆっくり、
隅々まできれいにする。
その彼女が最近よく転ぶ。数針縫う傷、MRIを撮りに行くほどの頭部外傷。裂傷等は日常茶飯事…

さすがに娘さんに事実を伝える。
娘さんが、
「おかあちゃん、千葉においで。一緒に住もう。」と言っても「孫が見れるよ。」と言っても「ご近所に迷惑をかけ続けることが出来ないよ。」と言っても首を縦に振らない。

「家を空けるわけにはいきません。私はここにいます。」
彼女の決意は固かった。

「どうしたらいいのか?」
娘さんにそう振られて、ハタと困った。
ケアマネに何が答えられるだろう。
彼女は
「ここにいたい。」
そう言っている。
いなければいけない理由を、次から次へと言い募る。
墓が。家が。庭が。仏さんが。
彼女はここを守っているのだ。
それが彼女の役割。それが彼女の生きる意味。

だけど、ケアマネは、言葉を飲み込んでしまう。
ここで死んでいってはいけませんか?