ケアマネージャーの仕事に月1回は担当している方の自宅を訪問するというのがある。
その時の話
漁師町に嫁いで70数年が経ち、今90歳半ばのAさん、結婚してから家の事や仕事を無我夢中でやってきた。山育ちの彼女はかなづちで、子どもが小さい頃、海で泳ぐ子らの見張りをしていたら夫から「泳げんもんが見とっても駄目じゃ」と、言われたそうだ。
その夫が亡くなる前「お前は泳げんけぇ、三途の川の前で待っとけ、
わしが泳いで迎えに行って、背負って渡ってやるけぇ」と
その言葉はそれまでの苦労を全て忘れさせ、ああ、ええ人と結婚した、
いつ死んでも怖くないと思ったのだと。
素敵な話だなと思いつつ、私は人生の最後の辺で誰かにこんな言葉を残すことができるだろうか考えた、が、何も思い浮かばず、その時出てきた言葉は
ご主人がAさんに気づかないかもしれないから目印に旗を振りますか?
(夫が亡くなって十数年経ち、家には祭りの時に掲げる家名入りの大きな旗があったので)
そう言うとAさんが、そりゃあええわ、そうしよう。と言い
娘さんが、お母さんそれも入れてあげるよと、と言った。
三人で笑った。